Fate/dragon’s dream

Interlude 3-1

幕間――そして

「……ねぇねぇ、シグ」
「――バカ、作戦行動中だと言っただろうが」
「う。……ねーぇ、お兄ちゃん」
「どうした」
「……なんかさ、むしろ目立ってない? あたし達」
「微笑ましい兄妹だと思われてるんだろうよ」
「――そうとはとっても思えないんだけど……なんかニヤニヤ見てる人もいるし」

新都の雑踏を歩くのは、もちろんジークフリートとファフニールの二人である。ジークフリートは白でまとめたラフな格好、ファフニールは藍色でまとめたツーピースという、確かに一人づつ見れば普通の服装ではある。なお、ファフニールは尻尾を隠しているのか、見えていない。

ではあるのだが――素材が素材なのでいかんせん目立つ。ジークフリートは2メートルはある巨漢の上、金髪の大変な美男子であり、その手に引かれる少女もまた美しい金髪とはっとするほどかわいらしい顔立ちをしている。

おまけに、――これが一番道行く人の目を引かせる原因になっているのだが――そんな二人がセットになると、そこには見る人の想像力を掻き立てずにはいられない疑問が発生するのだ。

即ち――果たしてこの美男子と美少女はどのような御関係なのか? という疑問である。

彼らが互いを呼ぶとおりに兄妹なのかもしれないが、それにしては結構年が離れているような気がする。さりとて、父娘であるのかというとそこまで年齢差があるようにも思えず、それも微妙な線。それ以前に娘にお兄ちゃんと呼ばせているのはどうか。

ま、まさか、恋人? いや、そうだとしたら、あの女性などよりどりみどりに違いないような美男子は確実にそっちのシュミの人だ。それは正直信じられない。というか信じたくない。

つまるところ、ジークフリートとファフニールの見た目から類推される関係は、現代社会の基盤からいうと徹底的に『微妙』なのであった。

(――なーんかシグってやっぱ抜けてるよねぇ……)
 口には出さない。言ったらきっと怖いことが起こる。もっとも、これは二人の常套手段なのである。兄妹に偽装するというのは別に今に始まったことではない。実際、英霊の座に収まる前に冒険中訪れたある村では、非常に仲の良い兄妹としてごく自然に生活風景の中に溶け込むことができた。

 だが、『それも時代と場所による』ということをジークフリートは気付いていないのか、あるいは気付いていても無頓着なのか、全然気にしていない。
(――十中八九、後者だろうけど)

やれやれ、とため息など吐いてみる。
「ファフ、ただ歩いてるだけじゃなくてちゃんと注意しとけよ」
「だいじょぶだいじょぶ。サーヴァントの気配なんてずぇーんぜんこれっぽっちもしないから。……やっぱさ、もう終わってんじゃないの?」
「ああ、そうかもしれんな。オレもそう思い始めてきたところだ」
「あのねぇ。そんなあっさりと」

まあ、こんなふうに目立っていたらまず間違いなくマークされるだろう。……マスターやサーヴァントからだけじゃないかもしれないけど。

ジークフリートは隠密行動をしているつもりらしいが、思惑とは別のところでサーヴァントを発見できるかもしれない。というか、これはむしろオトリソウサとかいうものだと考えが方がいいんじゃないだろうか。とりあえずファフニールは口をつぐんでおいた。

「――チ。退屈だな」
「――ちょ、ちょっと。いくらなんでもこんなところで暴れ始めないでよ?」
「バーカ。んなことするわきゃねぇだろ。だが、次に戦うことになった相手には、ちと楽しませてもらわないとな」
「んもう。もうちょっとシンボウエンリョしなさいよ。チョトツモウシンだけじゃどうにもならないんだからねー」

「なんだそりゃ。お前変な言葉知ってんな……って、ちょっと待て」
「ん? シ……お兄ちゃん、どうかした?」
「……ヤツだ」
「ヤツって……マスター?」
 耳に手を当て、遠くから聞こえる声をこぼさないような仕草をするジークフリート。ファフニールは細められた青い目をじっと見守る。

「……ファフ、行くぞ」
「令呪、解けたみたいね」
「ああ。合流して教会に行くらしい。あそこに結界を張って拠点にするんだとよ。――いよいよ面白くなってきやがったぜ、ファフ」

――Interlude out

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